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中村・清水法律事務所
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退職金という言葉は多くの人が知っていると思います。
ですが、退職金はどういった場合にもらえるのでしょうか。
会社には、賃金と異なり、そもそも退職金を支払う義務はありません。
なぜなら、退職金は会社から「恩恵」として給付されるものだからです(払うかどうかは会社の自由ということです。)。
そのため、会社で働いている人が会社を辞める時に必ず退職金がもらえるわけ
ではないのです。
では、どのような場合に支給されるのでしょうか。
相談形式でみてみましょう。
会社員Aさん:退職金が必ず貰えるものではない、ということはわかりまし
た。
では、どのような場合に貰えるのですか。
清水弁護士:退職金を制度として設けている必要があります。
制度を具体的に言いますと、多くの会社には以下のようなものが
あります。
①就業規則で定めている
②就業規則とは別に、退職金規定を定めている
③労働協約や労働契約で定めている
などです。
これらの制度があれば、退職金は「恩恵」給付ではなく、「賃
金」として扱われます。
賃金となると会社は必ず支払わなくてはならないのです。
会社員Bさん:うちの会社には退職金規定は無いし、就業規則にも退職金規定
がありません。でも先輩は定年退職するときに「俺は退職金も
らった。」と言っていました。制度がなくてももらえるのです
か。
清水弁護士:貰える場合もあります。過去の事件で次のような判断をした裁判
例があります。
その会社には就業規則で退職金の定めはありませんでしたが、退
職者に対して基本給にプラスして勤続年数に応じた金額の退職金
を支払っていたこと、入社した労働者に対して退職金制度がある
と説明したことから、退職支払の「慣行」があると判断し、退職
金の支給を認めました。
ただし、裁判所は、規定がない場合に退職金の支払いを会社に命
じるためには、就業規則等の明確な約定に代わる得るほどの事実
の集積が必要と考えているようです。
会社員Cさん:弊社には退職金の支給も慣行もありません。ただ、会社と私と
の間で退職金支払いの合意があったように記憶しています。
合意だけでは足りないのでしょうか。
清水弁護士:合意があれば退職金が支給される可能性があります。
しかしながら、その合意内容は明確でなければなりません。支給
される条件・支給する場合の計算方法・支給時期など具体的な合
意が必要です。
例えば、社長から「君はわが社に貢献してくれた。御礼をした
い。」と言われただけでは足りません。
パートDさん:私はAさんたちと違い、パート勤務です。上司から「君はパート
だから退職金は無いよ。」と言われました。
パートとはいえ、正社員と変わらない仕事内容でしかも何十年
も会社に尽くしてきたのに退職金は支給されないのでしょ
うか。
清水弁護士:まずは,就業規則などをきちんと確認しましょう。正社員とパート
を区別せずに支給すると書いてあるかもしれません。
次に、就業規則では正社員には退職金を支給するのに、パートに
は支給しないという規定になっている場合です。
Dさんのようにパートとはいえ正社員と変わらない働き方をして
いる方がいます。この場合、パートを正社員より差別的に取り扱
うことが違法と判断される可能性もあります。
退職金のトラブルで多いのが、会社経営が苦しいから退職金を支払わないというケースです。
経営者Xさん:就業規則はずいぶん前につくったもので今と経済事情が違うん
だよね。経営も苦しいし。退職金なんか払ったら、会社が倒産
しちゃうよ。
清水弁護士:経済事情や経営状況の変化は、払うべきものを払わない正当な理
由になりません。
経営者Xさんと清水弁護士のやりとりをご覧いただいて、就業規則を変更すればいいのではないか、と思った方もいらっしゃるかもしれません。
会社から一方的に就業規則を変更する場合には、原則として、従業員一人一人から個別に変更の合意を得る必要があります。
しかし、一人の従業員が反対していることで就業規則が一切変更できないということでは会社に酷となる場合があります。
そこで、個別合意がなくて例外的に、会社にとって就業規則を変更する必要性が高く、かつ、労働者の受ける不利益が少ない場合には就業規則の変更が認められます。
この例外に該当するかは裁判所が個別具体的に判断することになります。
では、「退職金を支給しない」という就業規則の変更が例外に該当するかです。
退職金の廃止は、他の就業規則の変更と比較して例外に該当するためにはハードルが高いかともいます。
仮に変更するとした場合には、突然廃止するのではなくまずは従業員に周知したり、徐々に減額するにしても突然減額ではなく代替措置(従前の退職金の定めと減額した退職金の差額を補償するもの)など会社には従業員への配慮が必要です。
会社員Eさん:会社から懲戒解雇にされました。会社から「懲戒解雇の場合は
退職金を支給しません。」と言われました。
清水弁護士:懲戒解雇が有効とされた場合、退職金を不支給または減額できる
かについては諸説あります。
裁判実務では、一定の要件が満たされれば不支給または減額が許
されるという立場です。
会社員Eさん:では、どのような場合に不支給または減額になるのですか。
清水弁護士:まず、退職金を不支給または減額するには、原則として就業規則
や退職金規定に明記されている必要があります。
明記してあったとしても、定めてある要件に該当しない場合には
不支給または減額はできません。
つぎに、不支給や減額の定めは、原則として懲戒解雇日までに有
効に成立している必要があります。
最後に、就業規則等に明記されている上、不支給や減額の要件に
該当するとしても実際に不支給や減額できるのは、
労働者のそれまでの勤続の功を抹消ないし減殺してしまう程度の
著しく信義に反する行為があった場合です。
まず、就業規則等において、退職金の支払時期を定めた場合には、その定めが支払時期となります(労働基準法89条3号の2)。
次に、特段定めがない場合です。
労働者(労働者がお亡くなりになった場合にはその遺族)から請求があった場合には、7日以内に支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。
※ただし、退職金が就業規則等に定められ「賃金」として扱われた場合です。
会社から「退職金はありません」と言われ、鵜呑みにしていませんか。
本来支給されるはずの退職金が支給されていないかもしれません。
しかも、退職金には時効があります。
時効期間は、5年間です。
時効期間を経過すると原則として請求できなくなります。
時効期間に関わらず、退職金の請求はお早めにすることを強くおすすめします。
しっかり時間をかけてお話しをお聴きします。お気軽にご相談ください。