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中村・清水法律事務所
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解雇には、大きく分けて3つあります。
1つ目は、普通解雇です。能力不足による解雇や傷病を原因とする解雇などがこれに当たります。労働者は保護されていますから、容易には解雇できません。
2つ目は、懲戒解雇です。違反行為に対する罰則としての解雇です。違反行為が本当にあったのか、違反行為があったとして重大な違反か、罰則が重すぎないかが問題になります。懲戒解雇にも高いハードルがあります。
3つ目は、整理解雇です。労働者に原因はなく、会社の都合でする解雇です。普通解雇よりもさらにハードルが高く、なかなか認められません。
このようにどの解雇理由であっても簡単に解雇はできません。
それにもかかわらず、経営者や労働者には誤った認識を持たれている方が多くいます。
それでは、相談形式で詳しくみていきましょう。
【契約編】
社員Aさん:社長からクビ(解雇)と言われました。社長は「会社とあなたの
契約なんだから、会社からだって自由に解雇できるんだよ。」と
言われました。本当ですか?
清水弁護士:会社から自由に解雇はできません。
仕事は社員(労働者)にとって生きていくのに不可欠な賃
金を得るものです。それを一方的に解雇するとなれば社
員の生活はたちまち不安定になってしまいます。
そこで、法律により、自由に解雇できないようになっていま
す。
【能力不足編】
社員Aさん:解雇の理由として「仕事は遅いしミスは多いし、あなたは能力不
足だ。あなたのような人は要らないから、能力不足で解雇しま
す。」と言われました。能力不足ならすぐ解雇になるのですか?
清水弁護士:能力不足で解雇するのは非常にハードルが高いのです。
よっぽどひどくない限りは、能力不足では解雇できません。
社員Aさん:「あなたの努力が足りないから自己責任だね。」とも言われまし
た。
清水弁護士: 本人の努力が足りないだけでは解雇できません。
なぜなら、会社側にも社員の能力を伸ばす義務があるから
です。会社の努力が足りないうちは、解雇できません。
社員Bさん:私は、会社内で孤立しがちです。社長から「あなたはコミュニケ
ーション能力が不足している。これは、能力不足である。能力不
足を理由に解雇します。」と言われました。解雇できるのです
か?
清水弁護士:孤立しているくらいでは、解雇できません。協調性がないこ
とで、企業秩序や業務に影響が出ているといえる必要があり
ます。
また、会社は、注意や指導を繰り返し行う必要があります
し、配置転換や職種の変更等で対応できるのであれば、やは
り解雇はできません。
能力不足と一口にいっても、使用者が望むレベルに達しないからといって、解雇できると思ったら大間違いです。
使用者は、給料に見合わなければ、解雇したいと考えがちです。しかし、給料に見合わないだけでは、適法に解雇することはできません。
能力不足で解雇が認められなかった例として、5段階評価のうち下から2番目の「標準を下回っている」という評価を5年受け続けていても、解雇が認められなかったケースがあります。その理由として、裁判所は、会社全体の成績が悪かったこと、以前はよい成績もとっていたこと、慣れない業務であったこと、他にミスなくできる業務もあること、解雇せずに降格などもできることなどをあげました。
仮にどの程度の能力不足であれば解雇できるか、イメージをもってもらうために書いてみます。重大なミスを何度も繰り返すほど能力不足が顕著で、指導や注意をしても今後の改善が期待できず、配置転換や職種変更をしても能力、技術の発達の余地がなく、降格もできないような場合です。
これは、あくまでもイメージですが、大体これくらいの能力不足でないと解雇できないと思ってください。どれかひとつだけあてはまる方がいるかもしれません。しかし、どれかひとつではダメです。これらのほとんど全部にあてはまらないと解雇は難しいのです。
【勤務態度編】
社員Cさん:無断欠勤を2回してしまいました。会社から「連絡くらいできる
だろ!1回目は大目にみてやったが、また無断欠勤するなんてと
んでもないやつだ。そんなやつはいらん。クビだ!」と言われま
した。
私は、クビになるのですか?
清水弁護士: 無断欠勤といっても、短期の欠勤は、相当な日数、頻度にな
らなければ、解雇できません。
長期の無断欠勤でも、正当な理由があったり、会社の管理が
ゆるかったり、業務への影響が少なければ、解雇はできませ
ん。
社員Dさん:私は管理職です。ここ最近、遅刻を繰り返してしまいました。今
朝、社長から呼び出され「管理職なのに何をやっているんだ。ほ
かの社員に示しがつかない。君には辞めてもらう。」と言われま
した。
私は解雇になるのでしょうか?
清水弁護士:管理職であっても、遅刻を繰り返しただけでは、簡単には解
雇できません。無断欠勤を繰り返したというなら話は別です
が。
この問題は、何回遅刻したらアウトとか、何回無断欠勤したらクビになるとか、明確な基準がありません。それぞれの会社にそれぞれの働き方があり、労働者個人個人の立場や職務内容が異なるからです。
おおまかにいいますと、以下の4つの要素を全部合わせて総合的に考えて、解雇ができるかできないか決まります。
① 労働者の地位や職務内容による責任の重さ
② 行為態様、すなわち、遅刻、早退、欠勤の頻度、回数、長さ、正当な理由があるかないか、必要な手続きを経ているかどうか
③ 会社の管理の程度、すなわち、注意の仕方、注意の回数や頻度、管理の仕方
④ 業務への影響、他者の負担の大きさ
これらの要素を基に具体的事情について判断していくことになります。
社員Eさん: お酒を飲んだあと運転して、検問で警察に捕まってしまいまし
た。会社から「飲酒運転するやつは会社として断じて許さな
い。懲戒解雇にする。」と言われました。
清水弁護士:たしかに飲酒運転したことはEさんにとって不利な事実です。
しかし、飲酒運転をしたのは勤務中だったのでしょうか。仮に勤
務中ではなくプライベートであれば勤務中に比較して懲戒解雇を
するハードルが上がることがあります。なぜかと言いますと、会
社として個人の私生活にまで介入して懲罰を与えることはできな
いからです。
(注)勤務中でもプライベートでも飲酒運転は絶対にダメです。
社員Fさん:会社内でのセクハラ行為が発覚し、会社から懲戒解雇と言われま
した。
就業規則をみたところ「懲戒解雇」という規定がありませんでし
たが、やはり懲戒解雇なのでしょうか。
清水弁護士:この場合には懲戒解雇が無効になる可能性があります。懲戒とは
懲罰ですから就業規則で定めておかなければならないのです。
もっとも、普通解雇として有効とされることがあります。
Eさんの事例の他に懲戒解雇が無効になる可能性があるのは
①就業規則を作成していない上、労働契約書にも懲戒処分につい
て何ら記載が無い場合
②就業規則があり懲戒処分についての記載もあるけれど、今回の
処分の根拠になりそうな事由や具体的な処分内容が記載されて
いない場合
これらの場合です。
就業規則は、懲戒処分の対象とされた事件などが起きた時に作成
されていなければなりません。あとから作成して懲戒処分とする
ことはできないのです。
また就業規則を労働者に周知させていなければなりません。
ただし、周知ですが会社が労働者一人一人に就業規則の内容を説
明したり配布したりすることは必要ないとされています。
会社としては、印刷やデータ化した就業規則を備え付けて置き、
労働者の請求があれば閲覧できる状態にしておけば足りるので
す。
もっとも、会社によっては、閲覧を申し出ても拒むことがありま
す。このような場合には周知させていたとは言えないと判断され
ます。
社員Gさん:会社から何の手続きも無しにいきなり懲戒解雇を言い渡されまし
た。私には反論の余地もありませんでした。
清水弁護士:就業規則などに懲戒解雇の手続きの規定がある場合に、その手続
きをあからさまに無視した懲戒解雇は無効となる可能性がありま
す。
では、手続きの規定がなければ意見を聞かなくても良いかという
とそうではありません。会社が懲罰という重大な処分をするわけ
ですから、少なくとも本人の言い分を聞く機会(弁明の機会)を
与えなければいけません。
就業規則の定めの他にも、弁護士が懲戒解雇の有効性を検討する際に、
①どのような職業の人が対象となったのか。
例えば、飲酒運転事例で、捕まったのがデータ入力の事務員とバス運転手であれば会社や社会に与える影響が違い、懲戒解雇の判断に影響します。
②そもそも懲戒処分の理由は正しいのか。
例えば、飲酒運転といっても、厳密に言えば酒気帯びと酒酔い運転があり、行政罰も異なります。このように懲戒理由をざっくりとみるのではなく細かく分析してどのような事案だったのかを把握します。
③二重処罰していないか
すでに、減給や停職処分を下していながら、さらに懲戒解雇処分をして否か検討します。1つの理由には1つの処分が原則です。
④同様の事例でほかの社員はどのような処分が下されたか。
懲戒には公平性が求められます。同様の事例で一方は減給1カ月、一方は懲戒解雇では不公平です。このような公平性を欠いた処分は懲戒解雇を無効とできる可能性が高いです。
ただし、飲酒運転の事例であれば、今と昔では飲酒運転に対する社会の目線の厳しさが異なるのは事実です。こうした主張を会社がしてくるのであれば、それでもなお公平性に欠ける要素がないか検討します。
⑤社員の過去の処分歴
いままでまじめに勤務し会社に貢献してきた人が、1回の行いで会社から退場させるのも処分が重すぎると判断される要素になります。
逆に言えば、過去に何回も懲戒の対象になり、今回もまた懲戒の対象になったとすれば、懲戒解雇を有効とする要素になります。
社員Hさん:今日リストラされました。会社からは「経営が苦しくこれ以上雇
えない。申し訳ない。」と言われました。家族がいるのに明日か
らどうすればいいのでしょう。
清水弁護士:リストラ(整理解雇)は経営難に陥った会社が行う一つの手段で
す。会社も経営が厳しいとはいえ、労働者の生活の糧である仕事
を一方的に奪う(解雇)することはできません。
裁判実務上、以下の4つの基準を総合的に考慮して判断します。
①人員削減の必要性
会社は人を減らす必要性に迫られていたのか。
②会社は解雇を回避するために努力したのか
たとえば早期退職者の募集や新規採用の停止など、解雇という
手段を回避するために会社としてとるべき手段をとったのか。
③解雇する人選の合理性
どうしてその人を解雇したのか、人選の合理性が求められま
す。例えば、この人嫌いだからなどという理由でリストラはで
きません。
④手続きの合理性
会社は労働組合や労働者にきちんと説明をしたか。
この4つの基準を具体的事例にあてはめ、整理解雇が有効か無効かを検討していきます。
会社を訴えるには2つの方法があります。
オーソドックスな方法です。
解雇が無効となった場合、原則として解雇時から復職時までの賃金を請求できます(これをバックペイと言います)。賃金には残業代や賞与などが含まれる場合があります。
ただし、解雇期間中に別の場所で収入を得た場合には、この収入がバックペイから控除されて、残額を支払うということもあります。
バックペイのもう一つの効力として、会社としては訴訟が長引けば長引くほど解雇無効となった場合に多額のバックペイを支払うことになるため、会社に対し紛争を早期解決する動機付けになることもあります。
会社に対し解雇の無効とバックペイの支払いを求めず金銭を求める方法です。
具体れとすれば、
①将来得られるはずだった金銭の請求
②慰謝料請求
などです。
この方法は、すでに転職先が決まっている場合などに解雇無効ではなく、金銭の請求をするものです。
社員Iさん:会社に戻る気は無いのですが、解雇無効の裁判をすることはでき
るのですか。
清水弁護士:できます。Iさんのようなケースが大半かと思います。
解雇無効の裁判では、「復職するか否か」ではなく「会社がした
『解雇が無効か否か』」を確認する裁判です。
結果として復職することもしないことも裁判では問題にしませ
ん。
社員Jさん:すでに転職先が決まり再就職していますが、この場合でも解雇無
効の裁判はできるのですか。
清水弁護士:解雇無効の裁判は可能です。
ただし、再就職の時点で元の会社を辞めたと判断される可能性が
高くなります。こうなると、バックペイの支払い期間は、解雇時
から再就職時までということになります。
社員Kさん:解雇が無効となったとして、会社には戻れるんですよね。
清水弁護士:確かに戻ることはできます。
しかしながら、現実として、自分たちを訴えた従業員を気持ちよ
く迎え入れることは多くありません。
よくあるケースですが、裁判が終わった後、会社と従業員が交渉
のテーブルにつき、会社から追加の金銭を支払って退職してもら
うということです。
さらに、仮に会社が裁判に負けたとしても、日本の裁判は3審制
(原則として日本では裁判を受ける権利が3回あります。)です
から、会社として不服申立てをすることもあります。
労力も掛かるうえ、金銭的な負担が大きく、弱い立場の従業員は
疲れ果てて会社と和解をすることを狙っているのです。頑張って
最高裁判所まで争い勝訴したとしたとしても、机を用意しなかっ
たり、会社にとって必要ない雑仕事をさせたりの嫌がらせをする
こともあると聞きます。
裁判で勝ったとしても復職することは難しいのが現状です。
さきほどもご説明しましたとおり、復職を求めるのであれば、いきなり訴訟を
起こすのではなく弁護士などに依頼して交渉をすべきであると考えます。
交渉により復職したというケースもあります。
裁判まで行ってしまえば、事実上、復職は困難になってしまいます。
不当解雇は違法行為です。
お一人で悩みを抱えず、ご相談ください。
丁寧にお話を聞き、最適な解決方法をご提案致します。
しっかり時間をかけてお話しをお聴きします。お気軽にご相談ください。